イオンビーム利用サービス

中性子を用いた放射線透過試験(中性子ラジオグラフィ)

放射線透過試験は非破壊検査の一つで、放射線の透過能力を用いて物質に対する透過率の違いから、欠陥、異物を検出する方法です。
一般の放射線透過試験では、X線を用いますが、我々は中性子を用いた放射線透過試験(中性子ラジオグラフィ)も提供します。
中性子は、X線とは異なり、金属ではなく、水素、ガドリニウムなどの特定の元素に対して透過しにくくなります。 中性子ラジオグラフィは、金属中の水素含有物などを非破壊で検査することができます。主に、航空宇宙分野の検査で用いられていて、宇宙ロケットの火工品検査、航空機用精密鋳造品の中子残りの検査に採用されています。
この検査は、30年以上の実績があります。放射線管理の観点で装置導入、管理が難しく、当社は、民間で唯一、中性子ラジオグラフィを実施しています。

中性子ラジオグラフィの特長

  • 透過能力が高く、金属を透過しやすい
  • 水素、ガドリニウムなどの特定の元素は透過しにくい
  • 水素を含む物質(火薬、樹脂、水)の検出が可能

中性子ラジオグラフィ装置

中性子ラジオグラフィ装置は、中性子発生部と照射部で構成されます。
中性子は、加速イオンをBeターゲットに衝突させることで、原子核反応により発生します。そのため中性子発生部は、イオンを加速する加速器とBeターゲットがあるモデレータで構成されています。
照射部は、中性子の平行度を上げるコリメータと画像をとる撮影系に分けられます。撮影系は中性子イメージングプレート法(IP)と、ガドリニウムコンバータと工業用X線フィルムを組み合わせたフィルム測定法の2つの撮影法を用いています。

中性子ラジオグラフィの品質規格

中性子ラジオグラフィの品質規格は、フィルム測定系ではASTM規格に準拠しています。ASTM規格のCategoryはⅢになります。イメージングプレートに対応する品質規格はありません。

中性子ラジオグラフィの撮影例

下の画像は、電子機器を中性子ラジオグラフィで撮影した画像です。左上はメモリ、左下はHDD、中央はDVDドライブ、右はLi-ion電池です。基板などの樹脂部品、Liなどの軽元素での構成部品が判別できています。